
「インターナショナル」という言葉が「ナショナル」なものの中間を指している言葉であるとすれば、そこにはまず、確 固たる「ナショナル」の存在が前提となるかもしれません。しかし社会・政治・経済・文化・環境のあらゆる面でグローバルな活動が活性化し、瞬間と距離を超えた「情報」が、 わたしたちの実生活に確実な影響を及ぼすようになって久しい今日、「インター」「ナショナル」という言葉はもはや、 わたしたちの現実的な国際感覚の、はるか後方に置き去りにされているような印象さえあります。かつてない相互親密の時代を迎え、地球規模で同時進行的な問題に直面するたわたしたちは、一体どのようにこ れからの「世界」を認識してゆくべきなのでしょうか。「コスモポリタニズム」という言葉は、古代ギリシャ、ディオゲネスによって構想されました。「世界主義」とも訳される この思想は「自らに降りかかる苦難などの運命をいかに克服してゆくか」という哲学を説いた、ストア派によって近 代にまで伝えられました。 グローバル化した人間の活動が南極の氷を溶かし熱帯のジャングルを焼き、ますます熱を発する放射性物質の傍ら で新しい地層の定義が議論される一方、人工知能がセンサー内蔵道路を走行し、やがて特異点に差し掛かる集積 情報からはじき出された「合理的な選択」が、人類の足元を照らし始めているような今日、わたしたちは、かつてない この豊穣の苦難にどのように向かい合ってゆくべきなのでしょうか。展覧会『コスモポリタン』は、「地球市民」としての思考を促すために企画されたシリーズの展覧会です。第二回となる今回は『誰もいない森の中で倒れた木からは音がするのか?』と題し、東京都荒川区西日暮里のギャラリ ー「HIGURE 17-15 cas」にて、金井学、梶原瑞生、高橋沙絵、石井潤一郎の作品をご紹介いたします。
会 期:2021年8月7日(土)-8月12日(木) / 8月17日(火)-8月22日(日)
13:00〜19:00
休廊日: 8月13日〜8月16日
参加作家:石井潤一郎(Jun'ichiro ISHII)
金井学(Manabu KANAI)
高橋沙絵(Sae TAKAHASHI)
梶原瑞生(Mizuki KAJIHARA)